「世帯主様はご主人でしょうか?」
離婚宣言をしてから5日後。
家から電車を乗り継いで1時間
会社までは快速を利用して30分程度の
小さな町の年季の入った不動産屋で私は硬直した。
『話してしまったら審査に通らないかも』
私と同い年くらいだろうか。
カウンターの向こう側では
ネイビーのスーツを着込んだ眼鏡の男性が動かない私を見てきょとんとしている。
冷や汗をかいて考えたけれど
うまい理由も思いつかず
どもりながら正直に事情をお話すると
「それなら保証人を立てるのも難しいと思いますので保証会社をご紹介しますね。」
「なにかご不安があればなんでもお聞かせください。」
あっさり笑顔で答えると
すぐに条件に合いそうな物件5つをプリントアウトしてくれた。
『きっと想像以上に同じような境遇の方がたくさんいるんだな。』
ぼんやり考えながら
私たちは「一番おすすめ」というワンルームマンションの内見へ向かった。
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