「集まりでうちだけ孫がいないもんだから恥ずかしい」
「こんな寂しい老後になるなんて思わなかった」
「子供ができないの知ってて黙ってたとかないよな?」
「お前の年齢が若ければ違っていたのかもなぁ」
布団の中で眠れずにいると
過去の姑と旦那の言葉が頭のなかによぎった。
嫁いだ当初優しかった姑は
不妊治療をやめたころから
人が変わったかのように厳しくあたるようになり
もともと姑に頭の上がらなかった旦那は
私が40歳で精神的な不調を理由に
不妊治療や仕事を辞めてからというものの
なにかにつけて私を責めるようになっていた。
私も喉から手が出るほど子供が欲しかった。
婦人科で涙をこらえたのは数えきれないほどだった。
『産めなくて申し訳ない』気持ちから
『せめて家事や介護で役に立とう』と日々働いているつもりだった。
『死ぬまでこの家に居なければいけないのか』
今まで思ったこともなかったけれど
一度考えだしたら止まらなくなっていた。
カーテン越しに外が明るくなってきた頃
ぐるぐる回っていた思考がふと止まる。
『離婚をしてもういちど人生をやり直せないだろうか』
突拍子もない思い付きだったけれど
限界だった私にはもう「それ以外にない」ように思えた。
カラスが大きく鳴く声を聞きながら
私は布団の中で一心不乱に
過去のLINEトーク履歴をさかのぼっていた。
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