「スマホを見せてもらえる?」
ここまで強い態度で旦那と話したことは今までになかった。
オロオロとしている姑には
寝室へ戻ってもらい
深夜のリビングで
旦那とふたり向かいあう。
『こんなに幼い顔をしていただろうか。』
久しぶりにまじまじと見た旦那は
私より年上のはずなのに不思議とずっと幼く見えた。
こわばった表情の旦那からスマートフォンを受け取り
LINEのトーク履歴やSNSを見てみると
浮気相手と思われるアカウントは一切ない。
どこを見ても『ない証拠』をしばらく探して
「あ」と気づいた。
「もしかして今日の間に消した?」
私がバカだった。
昨日証拠を突き付けてから今までに
旦那が証拠を消すための時間はたっぷりあった。
考えればわかりそうなことだけれど
どこかで旦那が『きちんと話し合ってくれる』期待があったのかもしれない。
ずっと沈黙を貫いていた旦那が
しばらくしてようやくもごもごと口を動かす。
「あれは一度だけそういう店にいったときのだよ。」
「知らない人だし、連絡とかはとってない。」
「仕事の飲み会帰りで酔ってて、たぶんノリで行ったと思うけどすぐに寝ちゃったし。服を脱がされたことも覚えていない。」
今日一日考え抜いたのか。
旦那が昨日よりも多少しっかりした口調で答えた。
怒りなのか悲しみなのかわからないけれど
頭が砂嵐がかかったように真っ白になって、膝裏が震えた。
一言の言葉も出せずに唖然としていると
突然旦那が吐き捨てるように息をつく。
「本当なら俺だってあんなところいかないんだよ」
「家でできないんだから俺がそういう場所に行くのは仕方ないだろ」
「あんな紙切れで鬼の首とったような顔しやがって」
「被害者ヅラするのもいい加減にしろ」
旦那の中でなにかが堰を切ったかのようだった。
大声で叫びながら立ち上がると
私に近寄り手からスマートフォンをむしりとる。
「やめて」
あまりの勢いに驚いて
私は旦那からスマートフォンを奪い返すこともできずに
気づけば身を守ろうと
両手で頭を隠していた。
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